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Web制作に関わる皆さんにお勧めしたい良書 – デザイニングWebアクセシビリティ

今回取り上げる「デザイニングWebアクセシビリティ」は書籍版はもう2年近く前に、電子書籍版も昨年末(amazon.co.jp では年明けから)に発売された本で、既に読んだ方も多いでしょうが、最近読んだ本の中ではかなりプッシュしたい本なので今更ながら感想とかをブログでまとめてみます。

デザイニングWebアクセシビリティの構成

本書は冒頭でWebアクセシビリティとは何か?といった部分から、全般について書かれていますが、それ以降の流れはサイト制作に沿った一般的な工程から順に、

  • 各プロセスの概要
  • そのプロセスで注意すべき点
  • ユーザにとって問題が起きやすいポイント
  • 解決のアプローチ

といった具合に、各工程をアクセシビリティ視点でまとめられているのが特長です。

また、文中でも

基本的に HTML と CSS で作られた静的なコンテンツを扱っています。動画や音声、アプリケーションなどについては、基本的な考え方を示すにとどめました。

とあるように、静的コンテンツにおけるアクセシビリティを主題に扱われています。

Webの本質はアクセシビリティ

本編は Accessibility – W3C 冒頭の Tim Berners-Lee 氏による

The power of the Web is in its universality.
Access by everyone regardless of disability is an essential aspect.

という言葉の引用から始まり、そもそもアクセシビリティが Web の本質である旨を取り上げられています。

  • 物理の道具では、提供されたものをそのまま使うしかない
    • 道具そのものがユニバーサルなデザインになっていなければならない
    • Webでは、コンテンツ単独ではなく、ユーザーエージェントと合わせることでユニバーサルデザインを実現できる
  • ユーザーはユーザーエージェントを変更したり、支援技術を導入することで、自分に合った環境を得られる
    • Webにおけるアクセシブルなコンテンツとは、マシンリーダブルなコンテンツであることとほぼ同義

即ち、

  • マシンリーダブルである限り、ユーザーエージェントなどのプログラムや支援技術によって(適切に)解釈されてユーザに情報を伝えることができる
  • HTML がテキストにマークアップを施すことで要素の構造や意味が明確になるようにしたもの

であるがゆえに Web は他メディアと比べ圧倒的にアクセシブルであり、素直に作られたHTMLのコンテンツの多くは、自然とアクセシブルなものになる旨が強調されています。

また、「アクセシビリティ」という言葉からは高齢者や障害者への対応というイメージを持たれやすいですが、

  • (高齢者や障害者に限らずもっと幅広い意味での)アクセスできる人を増やすため
  • 未知のデバイスを含む、さまざまなデバイスに対応するため
  • SEOのため
  • ユーザビリティの向上・改善のため
  • ユーザ体験の向上・改善のため
  • 公的機関のサイトなど要件として求められる、規格準拠のため
  • 取り組みをアピールするため

といった、もっと幅の広い理由で「アクセシビリティ」の考慮や取り組みがなされることが書かれています。

アクセシビリティへの取り組みはプロジェクトの第一歩目から

Chapter 2 からはサイト制作に沿った一般的な工程から順に

  • そのプロセスで注意すべき点
  • ユーザにとって問題が起きやすいポイント

などに触れられていくのですが、アクセシビリティへの取り組みとして与件の整理・ビジネス要件の調査の段階から取り上げられているのが印象的で、同時に納得のいく点でもあります。

アクセシビリティは「後付でなんとなく」ではなく、目的があって取り組んでいくものなので、プロジェクトの第一歩目の段階で方針が定まっているべきですし、そもそもそういう前提で話が進んでいないプロジェクトでいきなり実装段階で対応を求められてできるものではありません。

日本では Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0 (日本語版) をそのまま国際規約として承認された ISO/IEC 40500:2012 への一致規格とするために改定された、JIS X 8341-3:2016 で Webコンテンツのアクセシビリティが扱われています。

ただ、JIS というだけで内容に触れずに「技術的な問題 == 実装工程でやる作業」と決めつけてしまう案件担当者が結構いるようですが、本書ではサイトを作ろうと計画する段階から考慮されるべき要素であることを明示されているのが素晴らしいです。

実際、ベースとなっている WCAG 2.0 を読み進めてみると実装方法の話はほとんどなく、設計(広義の意味でのデザイン含む)の話が多く、設計や仕様策定の大前提となる与件や要件から導き出されたアクセシビリティ方針の策定が重要であることが分かります。

感想まとめ

本書の構成がWeb制作のよくある形の工程順で描かれていることもあり、スクリーンリーダーでの処理のされ方という文脈以外は、ほとんど普通のWeb制作と変わらないことを示してくれている内容であるのですんなり入ってきやすいと思います。

また、その各工程で問題となりやすいポイントを細かくピックアップしてくれているので、いざ Webアクセシビリティ に本格的に取り掛かってみようと思った際のとっかかりになってくれる感じもあります。

ただ、それ以上にやはりアクセシビリティへの取り組みとして与件の整理・ビジネス要件の調査の段階から取り上げられている点は評価したいポイントです。アクセシビリティの話は意図せず「コーディングする際には○○する方が望ましい」とか、「読み上げのことを考えるとテーブルレイアウトは避けるべき」などの実装の話へいつの間にか流れてしまいがちに感じてました。

それだけに、本当に大切なそれまでの取り組みの話は(ちゃんと語られてる場合でも)いつしか聞き手的に忘れられてしまいやすいのですが、ページを割いて「戦略や要件定義の段階の初動が大事だよ」と明示してもらえるのは心強い限りです。

各工程ごとでのWebアクセシビリティに取り組む上で注意すべき点を中心にまとめられる構成となっていますが、語られているのはWebアクセシビリティの根底となる部分で、こうしたレイヤーの話は時間が経っても陳腐化しないという点でも、この本は是非、Web制作に関わる皆さんに読んでいただきたいですね。

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